特集 氏子の想い Vol.5

特集 氏子の想い

木遣り唄に願いと想いを込めて

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小松直人さん
下諏訪町木遣保存会 会長

―木遣保存会の概要を教えてください

■小松 私が会長を務めております【下諏訪町木遣保存会】は、現在総勢92名(子供18名含む)で活動しています。中にはすでにご高齢となった大先輩もいますので、実際に活動しているのは70名くらいです。そんな私たちも一人ひとりが諏訪大社の氏子であり、氏子だからこそこの保存会の一員となって、「木遣りで御柱祭に奉仕する」という思いで練習にも熱心に取り組んでいるのです。

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―小松さんが木遣りを始めたきっかけは?

■小松 きっかけは父でした。父は声の良い木遣り師で、息子である私は幼い頃から子守唄のように唄を聞いて育ち、見様見真似で声を出していました。保存会に入ったのは28歳です。父譲りの強い喉を授かったことに感謝しています。それと偶然ながら私は御柱祭が行われる寅年生まれなんですが、これも『地元の文化を伝承して行きなさい』ということだろう、と思っています。

―木遣りは町の無形文化財に登録されていますね?

■小松 もともと【木遣り会】という集まりだったものを、先輩たちが苦労して組織化し、保存会を立ち上げてくださったんです。諏訪6市町村に9つの保存会がある中でも【下諏訪町木遣保存会】にはすでに半世紀以上の歴史がありますので、私たちはご尽力いただいた先輩方への感謝と敬意を胸に活動しています。そして、ちょうど保存会が創立50周年を迎えた2012年に、木遣りが町の無形文化財に登録されました。これは、保存会の50年の活動実績と2種類の唄を大切に伝承し続けていることを評価していただき、引き続きその役割を担って行くことを期待されてのことだと思います。

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―下諏訪町木遣保存会特有の唄があるのですか?

■小松 御柱祭で唄われる木遣り唄には「曳行の木遣り」と「綱渡りの木遣り」の2つあります。
「曳行の木遣り」は名の通り、御柱を曳行する際に唄われるものです。大きな柱を曳き出すための合図であり、曳き手の氏子たちの心をひとつにして力を出していただく役割があるものです。
「綱渡りの木遣り」は、山の神様をお迎えする時とお送りする時に唄われるものです。御柱の曳行前と後で言葉も変わりますし、その言葉に込められる意味も変わります。この唄は神主さんが祝詞を上げるような、独特の節回しを特徴とする木遣りなんです。

―木遣りに込められた願いや想いとは?

■小松 私たちがこれほどまでに木遣りを大切にするのは、氏子の皆様と神様を山から里へとお運びする役目を木遣りが担っているからなんです。だからこそ、御幣(おんべ)を高く掲げさせてもらい、天にまで届くような高く澄んだ声で曳行の安全を願いながら祭りに参加している人々に力や元気を与えます。
つまり、私たちの木遣りによって氏子の心が一つになり、そうして初めて御柱が動くということです。心を合わせて御柱を曳くからこそ、安全に神様をお連れすることができる。これが「木遣りなくして御柱は無く、御柱なくして諏訪はなし、木遣りこそ御柱の華である」と言われる所以だと思っています。私たち会員はこんなにも重要な役割を担っているという自覚を持ち、木遣りに込められた願いを常に心に留めて唄うことが大切だと感じています。

―では、その木遣りを伝承することとは?

■小松 私たちが木遣りを守り続ける第一の目的は、御柱祭と木遣りという地域の大切な文化・伝統を次代に伝えて未来に残すことです。そして、御柱祭において木遣りで奉仕することです。しかし、それだけではありません。私たちは毎週練習を重ねて本番である御柱祭に備えつつ、地域のイベントへの参加、保育園・小学校への出前講座や介護施設への慰問など、小さな子供さんからお年寄りまで、まず身近で触れていただく機会をつくるようにしています。積極的にいろいろな場所に出向いて、御柱祭の映像を流しながらお祭りと木遣りの説明をしたり、唄ったりしています。子供会員18名も、諏訪大社の境内で、毎週、心ひとつに頑張って練習していますよ。元気よく大きな声で木遣りを唄うことは子供たちの自信にもなります。
私たちがこうした地道な活動を積極的に行うのは、木遣りに込められた「力や元気を与える」「安全や健康を願う」という気持ちを多くの人に感じていただきたいからです。そして、地域の伝統を守り、その伝統を地域に広め、さらに、もっと小さな子供たちに伝えていきたいからです。御柱祭や木遣りへの理解が深まれば、自然と地域の伝統行事への奉仕の気持ちも根付きます。すると、大人になった時、もしその子が木遣りを唄わないとしても何らかの形でお祭りに携わってくれるようになるでしょう。私たちの活動は木遣りを守ることのほかにも、地域に元気を与え、子供たちを地域の一員として大切に育むという意味があると考えています。

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―最後に御柱祭での見どころ・聞きどころを教えてください。

■小松 御柱祭には1200年もの歴史があります。つまり、木遣りにもそれだけの歴史があるということです。その歴史の重みを感じながら、私たちは一生懸命に唄います。その姿に目を向け、耳を傾けてください。また、唄の文句も20種類ほどあり、その場その場で木遣り師が「こういう場面ではこの唄を」と選んで唄っています。ぜひ御柱の曳行状況とともに木遣りを楽しんでください。(平成27年8月取材)

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